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東京家庭裁判所 昭和42年(家イ)800号 審判 1967年7月28日

申立人 田畑スエ(仮名)

相手方 田畑良助(仮名)

主文

一  申立人と相手方とを離婚する。

二  当事者間の長女みどりの親権者を申立人と定め、同人において監護養育する。

理由

一  本件記録添付の戸籍謄本、当庁家庭裁判所調査官小林麗子の調査報告書、杉並警察署長警視野田市郎名義の児童通告書、同署司法警察員島村栄二ほか一名名義の「保護者遺棄被疑事件捜査報告書」と題する書面及び本件調停の経過を総合すると、次のような事実が認められる。

(一)  申立人(昭和一六年四月八日生)と相手方(昭和七年一〇月一二日生)とは、昭和三七年一一月一五日婚姻、翌三八年二月一六日長女みどりを儲けたこと。

(二)  相手方は、長女出生の頃から競輪・競馬等の賭け事に没頭したほか、労働意欲に乏しく、更に、家計をかえりみず深酒を重ね、浪費癖に富み、申立人に対して殆んど生活費を渡さないのみか、長女の養育についても頗る無責任な生活態度に明け暮れ、申立人の切なる懇願にも耳を貸さず、何ら反省の色を見せないため、堪まり兼ねた申立人は、昭和四〇年四月頃長女を伴ない相手方と別居するに及んだこと。

(三)  その翌年夏頃たまたま街頭で申立人母子と遭遇した相手方は、長女を引取つて現住所の実兄方に身を寄せたのであるが、依然として長女の養育につき無関心な毎日を送り、隣人等のひんしゆくを買つていたところ、昭和四二年一月二六日夜長女ひとりを自居に残した儘飲酒に耽り、外泊した末、翌日の夜遅くやつと帰宅したものの、長女は、右二六日午後一〇時頃空腹の余り家を飛出し、幸い、近隣者の発見によつて杉並児童相談所で保護され、同年三月九日以降児童養護施設たる社会福祉法人「のぞみの家」で収容保護されていること。

(四)  申立人は、終始相手方との離婚を求めて止まないのに対し、相手方は、申立人への執着を捨て切れないと述べ、しかも、五回に亘る調停期日中、当庁家庭裁判所調査官による出頭勧告乃至正式呼出にも拘わらず、二回出頭したのみで、調停成立の見込みがないこと。

二  叙上の事実関係に照らすと、当事者間の結婚生活が既に完全な破綻状態に陥つていることは多言するまでもなく、しかも、その責任の大部分が相手方に存する(顕著な協力扶助義務の違反)と判断される。

そこで、当裁判所は、一切の事情を観て、当事者双方のため衡平に考慮し、調停委員の意見を聴いた結果、事件解決のため、家事審判法第二四条に従い、主文の通り審判するのを相当と認める。

(家事審判官 角谷三千夫)

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